不定詞・不定法 infinitif の何が「不定」なのか

「不定詞」、あるいは「不定法」「不定形」などと訳される infinitif は、一体何が「不定」なのか。infinitif という用語自体はラテン文法の infinitiuus に由来し、このラテン語もまた、おそらくギリシア語で「不定法」を指す ἀπαλέμφαρος「何も付帯的なものがない」に由来するものらしい。

さしあたって、仏文法では infinitif がどのように定義されているかみると、例えば Grevisse は次のように述べている(§ 900):« L’infinitif est un mode qui ne porte ni l’indication de nombre, ni celle de personne. »「不定法は数の指示も、人称の指示も持たない法である。」例えば、aiment という形は、それだけで主語が3人称複数であることが示されるが、aimer という形には主語の人称・数の情報がない。これは、ラテン語およびギリシア語でも同様である。

ところで、動詞の活用体系のうち主語の人称・数を示さないのは不定詞だけでなく、例えば一連の分詞にも当てはまる。なぜ、特別に不定詞だけを infinitif と呼ぶかと言えば、これは古典文法では「法」modus の一つとして考えられたからで、直説法や接続法などと対比されるものだった。上で « un mode » と説明されているのも、「不定法」という訳もそこから来ている。最近ではその機能から、« une forme nominale du verbe »「動詞の名詞形」などと説明され、動詞と形容詞の機能を併せ持つ分詞と同列に扱われることが多い。「不定詞」「不定形」といった訳語はそれを受けたものである。

biblio :
Grevisse, M., Le bon usage, de Boeck Duculot.
風間喜代三『ラテン語とギリシア語』三省堂